バスは阿蘇五岳の雄大な景色に背中を押されるようにえっちらおっちら這いのぼり、うんざりするくらいつぎからつぎにあらわれる急カーブに車体を右に左に揺らしながら、乗客の多くをどろどろに酔わせた。(中略)ようやく峠を越えると、果てもなく重畳する山また山の高千穂が息苦しくなるほど眼に迫り、私は広々とひらけた阿蘇のほうではなく、どうして高千穂で生まれたのかと、子供ごころにわが身を恨んだ。

高山文彦   鬼降る森

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